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中国個人所得税と海外社会保険

会社負担分は中国で給与所得になるのか?-日本制度との比較
2026年9月13日 by
中国個人所得税と海外社会保険
KAZUHISA MOCHIZUKI


はじめに

日本企業から中国に赴任する駐在員などについて中国個人所得税を計算する際、見落とされやすい項目の一つが、日本その他の国で会社が負担している社会保険料です。

中国で課税される給与は、中国国内で実際に本人へ振り込まれる給与だけとは限りません。

中国個人所得税法上の「給与・賃金所得(工资、薪金所得)」には、給与、賞与、手当等だけでなく、任職又は雇用に関連して取得するその他の所得も含まれます。

したがって、海外本社が負担している費用についても、その性質によっては中国の個人所得税計算に含める必要があります。

中国国内の社会保険については明確な免税規定

中国国内の法定社会保険については比較的明確です。

財税〔2006〕10号により、企業・事業単位が国又は省級政府の定める割合・方法に従って実際に納付する基本養老保険、基本医療保険及び失業保険については、個人所得税が免除されています。

一方、規定された割合・基準を超えて企業又は個人が支払った部分については、その超過部分を従業員の当期給与・賃金所得に算入して個人所得税を計算することとされています。

つまり中国国内制度については、法定範囲内の社会保険=免税という明示的な制度があります。問題となるのは、これと同じ考え方を外国の社会保険にも適用できるかという点です。

かつての「外国法上の会社負担社会保険」を除外する規定

この点について、中国には非常に興味深い制度の変遷があります。

国家税務総局の国税発〔1998〕101号は、企業が中国で勤務する従業員について負担する海外保険料を原則として給与・賃金所得に含める一方、外国法令上、雇用主が負担すべき社会保障的性質の費用については、一定の条件のもとで従業員の課税所得に含めない取扱いを認めていました。

つまり、かつての中国税制には、「これは従業員に対する追加的な報酬ではなく、外国法によって雇用主自身に課された社会保障負担である」という考え方を認める制度が存在していたことになります。

しかし、国税発〔1998〕101号の個人所得税に関する規定は2011年に廃止され、その後、同通知自体も2023年に全文廃止されています。

したがって現在、「日本法上、会社が負担することになっている厚生年金保険料だから、中国でも当然に非課税である」と考えることはできません。

中国国内の法定社会保険には財税〔2006〕10号による明示的な免税制度がありますが、その規定を外国の社会保険にそのまま拡張できるとは限らないためです。

日本の会社負担社会保険がある場合

例えば、中国で勤務する日本人駐在員について、日本本社が引き続き日本の厚生年金等を負担しているケースを考えてみます。

給与が次のようになっているとします。

  • 中国現地法人支給給与
  • 日本本社支給給与
  • 日本側社会保険の本人負担分
  • 日本側社会保険の会社負担分
  • 企業年金
  • 民間医療保険・生命保険等

これらをすべて同じように取り扱うべきではありません。

特に、日本の法定社会保険の会社負担分と、会社が任意に加入している民間保険・企業年金等とでは制度の性質が異なります。

しかし、中国個人所得税上、外国法上のEmployer Contributionだからという理由だけで自動的に課税対象外となる現行の包括的な規定は確認できません。

したがって実務上は、海外給与計算に含まれる各項目について、給与・賃金所得に該当するか、現行法上適用可能な非課税規定があるかを個別に確認する必要があります。

日本と中国では考え方が同じとは限らない

この問題が特に難しい理由は、同じ社会保険料について日本と中国で所得税上の評価が異なる可能性があることです。

日本では、会社自身が法令上負担する社会保険料なのか、従業員本人が負担すべき保険料を会社が肩代わりしているのかという区分が重要になります。

これに対して中国では、国内法定社会保険については明示的な免税規定が設けられている一方、外国社会保険について過去に存在した特別な非課税取扱いは現在廃止されています。

したがって、「日本で給与にならないから中国でも給与にならない」、あるいは逆に、「中国で給与に含まれるから日本でも給与になる」とは限りません。クロスボーダー給与では、それぞれの国で課税給与を再構成する必要があります。

駐在員Payrollで確認すべき項目

中国駐在員の個人所得税計算では、毎月のCash Salaryだけでなく、少なくとも次の項目を確認することが重要です。

  1. 中国国内給与
  2. 海外本社支給給与・賞与
  3. Housingその他の現物給付
  4. Tax Equalization / Tax Reimbursement
  5. 外国社会保険の本人負担分
  6. 外国社会保険の会社負担分
  7. 企業年金・退職年金
  8. 民間医療保険・生命保険
  9. Stock Option、RSUその他のEquity Compensation

特に日本企業の中国駐在員については、日本側Payrollの「総支給額」をそのまま中国の課税給与として使用するのではなく、日本側Payrollの各項目を中国個人所得税上どのように取り扱うかMappingする作業が重要となります。

Mochizuki Consultingでは、日本企業の中国駐在員を中心として、中国個人所得税申告、海外給与の課税関係、社会保険、Tax Equalization及び日中双方の個人所得税計算について、日中双方のPayrollを確認したうえで対応しています。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。外国社会保険料の中国個人所得税上の取扱いについては、対象となる制度、会社と従業員の負担関係、給与体系、勤務場所、居住日数等を確認したうえで個別に判断する必要があります。


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