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【2026年中国企業会計基準の改訂】損益計算書の表示変更と営業外収入・営業外支出の見直し

2026年9月3日 by
【2026年中国企業会計基準の改訂】損益計算書の表示変更と営業外収入・営業外支出の見直し
Liying Huang

はじめに

2026年、中国の財政部は「企業会計準則第30号――財務諸表列報」を改訂し、企業の損益計算書の表示方法を大きく見直した。今回の改訂は、国際財務報告基準(IFRS)との継続的なコンバージェンスを進めるとともに、企業の利益構造をより明確に表示し、財務情報の比較可能性と透明性を高めることを目的としている。

今回の改訂について、「営業外収入」「営業外支出」の科目が廃止されると説明されることがある。しかし、正確には、2026年に直ちにすべての会計科目が廃止されるというものではなく、主として損益計算書における損益の分類・表示方法が変更される点が重要である。

新しい財務諸表の考え方では、当期の損益を「経営活動」「投資活動」「財務活動」「所得税費用」「非継続事業」の5つのカテゴリーに分類し、「営業利益」「営業・投資利益」「継続事業利益」などの利益指標を設ける。これにより、企業が本業からどの程度利益を生み出しているのか、投資活動や資金調達が利益にどのような影響を与えているのかを、より明確に把握できるようになる。

日本企業が中国子会社の財務諸表を確認する場合や、中国現地法人の会計・税務を管理する場合にも、この変更は重要である。


1. 2026年中国企業会計基準改訂の概要

今回の改訂対象は「企業会計準則第30号――財務諸表列報」である。中国財政部は2026年7月に改訂版を正式に公布した。

今回の改訂は、会計上の認識や測定方法そのものを全面的に変更するものではなく、主として財務諸表における情報の「表示」と「開示」を改善するものである。財政部も、今回の改訂は財務諸表の表示・開示の最適化を中心とし、会計上の認識・測定要件を変更するものではないと説明している。

背景には、従来の損益計算書では、投資活動や資金調達活動などによって生じる損益が営業利益の中に含まれるケースがあり、企業の本業による収益力を財務諸表から直感的に把握しにくいという問題があった。

今回の改訂では、こうした問題を解消し、企業の利益の源泉をより構造的に表示することが重視されている。

また、国際財務報告基準(IFRS)第18号「財務諸表における表示及び開示」が2027年1月1日から適用されることを踏まえ、中国企業会計基準についても国際基準との整合性を高める方向で改訂が行われた。


2. 「営業外収入・営業外支出の廃止」はどう理解すべきか

今回の改訂を理解する上で特に注意したいのが、「営業外収入・営業外支出が廃止される」という表現である。

従来の中国企業会計基準では、損益計算書に「営業利益」「利益総額」「純利益」などの項目があり、「営業外収入」「営業外支出」は利益総額を算定する際の重要な項目として扱われてきた。

例えば、公益性のある寄付支出、自然災害等による損失、非流動資産の毀損・廃棄損失など、企業の日常的な営業活動とは直接関係しない損益について「営業外収入」または「営業外支出」として処理する考え方が存在していた。

しかし、今回の改訂では、損益を単純に「営業」と「営業外」に分けるのではなく、「経営」「投資」「財務」「所得税費用」「非継続事業」という5つのカテゴリーで整理する方向に変更された。

そのため、実務上は「営業外」という一つのカテゴリーにまとめていた損益について、今後はその取引の性質に応じて、経営活動、投資活動、財務活動などのカテゴリーに分類して表示することが重要になる。

つまり、今回の改訂は単純な「営業外科目の削除」ではなく、損益をどのような基準で分類し、損益計算書に表示するかという考え方そのものを見直す改訂と理解するのが適切である。


3. 新しい損益計算書の5つのカテゴリー

新しい企業会計準則第30号では、企業の当期損益を「経営活動」「投資活動」「財務活動」「所得税費用」「非継続事業」の5つのカテゴリーに分類する考え方が導入される。

「経営活動」は、企業の主要な事業活動を中心とするカテゴリーである。企業が商品を販売したり、サービスを提供したりすることによって生じる収益・費用などが基本的にここに分類される。

「投資活動」は、投資から生じる収益・損失などを分類するカテゴリーである。

「財務活動」は、借入金などの資金調達活動に関連する損益を分類するカテゴリーである。

「所得税費用」は、企業所得税などの所得税に関する費用を区分して表示する。

「非継続事業」は、企業が既に処分した、または売却目的で保有しているなど、通常の継続的な事業活動とは区別して表示する必要がある事業に関する損益を対象とする。

このような分類により、財務諸表の利用者は、企業の利益が本業によるものなのか、投資によるものなのか、あるいは資金調達に関連するものなのかを把握しやすくなる。


4. 「営業利益」の意味も重要になる

今回の改訂で特に重要なのが、「営業利益」をより明確な経営指標として位置付ける点である。

新しい損益計算書では、「営業利益」「営業・投資利益」「継続事業利益」などの合計項目が設けられる。

これにより、従来よりも企業の本業による利益を明確に把握しやすくなる。

例えば、ある中国子会社が本業では利益をほとんど生み出していない一方で、保有する金融資産から多額の投資収益を得ている場合、従来の損益計算書だけでは企業全体の利益がどこから生じているのかを把握しにくい場合がある。

新しい表示方法では、経営活動と投資活動をより明確に区分することにより、本業の収益力と投資による収益を区別して分析できるようになる。

日本の親会社が中国子会社の業績を評価する際にも、「純利益はいくらか」だけでなく、「経営活動からどの程度利益を生み出しているか」を確認することが重要になる。


5. 特定の主要事業を行う企業には特別な考え方も必要

今回の改訂では、すべての企業に同じ分類方法を機械的に適用するわけではない点にも注意が必要である。

特定の主要事業活動を行っている企業については、一般企業であれば投資または財務カテゴリーに分類される損益であっても、その企業の主要な事業活動との関係から経営カテゴリーに分類する必要がある場合がある。

これは、企業の実際のビジネスモデルを財務諸表に反映させるための仕組みである。

例えば、金融機関や投資関連企業など、投資や資金調達そのものが主要な事業活動となっている企業では、一般企業と同じ基準で「投資」や「財務」に分類すると、企業の本来の事業実態が財務諸表から分かりにくくなる可能性がある。

そのため、企業の主要な事業活動を踏まえて損益を分類することが重要となる。


6. 管理層業績指標の開示も強化

今回の改訂では、損益計算書の構造だけでなく、管理層が使用する業績指標についても新たな開示要求が導入される。

企業が財務諸表以外の正式な公表資料において、会計基準上必須ではない独自の利益指標を使用し、それによって経営者の企業全体の財務業績に対する見方を利用者に提供している場合、その指標は「管理層業績指標」として注記において開示する必要がある。

その場合、指標の内容や計算方法などについても説明することが求められる。

これは、企業が独自に作成した「調整後営業利益」「調整後利益」などの指標について、財務諸表利用者がその意味や計算方法を理解できるようにすることを目的としている。

日本の親会社が中国子会社の月次・四半期レポートを確認する際にも、中国子会社が作成する独自のKPIや利益指標について、会計基準上の利益指標と混同しないよう注意する必要がある。


7. 日本企業の中国子会社への影響

今回の改訂は、日本企業が中国に設立した現地法人にも影響を与える可能性がある。

特に、中国子会社の財務諸表を日本の親会社が連結決算に取り込む場合には、損益項目の分類や表示方法の変更が、連結パッケージや管理会計資料の作成方法に影響する可能性がある。

また、中国現地法人が使用している会計ソフトやERPシステムについても、新しい損益分類に対応するための勘定科目マッピングが必要になる可能性がある。

例えば、従来「営業外収入」「営業外支出」として一括管理していた取引について、今後は取引の性質に応じて経営、投資、財務などのカテゴリーに振り分ける必要が生じる。

そのため、日本本社の経理部門と中国現地法人の財務・会計担当者との間で、勘定科目と損益分類の対応関係を早めに確認しておくことが望ましい。


8. 税務への影響は会計基準とは分けて考える

今回の改訂で注意すべき重要なポイントは、会計上の表示変更と企業所得税の計算方法を同一視しないことである。

企業会計準則第30号の改訂は、主として財務諸表の表示・開示に関するものであり、財務諸表上の損益分類が変更されたからといって、その取引について中国の企業所得税法上の課税関係が自動的に変更されるわけではない。

例えば、会計上ある収益が「経営活動」に分類されたとしても、それだけを理由に税務上の課税所得の計算方法が変更されるわけではない。

逆に、会計上の表示方法が変更されても、税務申告上は中国税法に基づいて調整が必要となる可能性がある。

日本企業が中国子会社の税務を管理する場合には、会計基準による財務報告と、中国企業所得税法等に基づく税務申告を区別して管理することが重要である。


9. 適用時期と企業が準備すべきこと

新しい企業会計準則第30号は、すべての企業が2026年中に一斉に適用するわけではない。

財政部の発表によれば、国内外で同時上場している企業、および海外上場企業でIFRSまたは中国企業会計準則に基づいて財務諸表を作成している企業については、2027年1月1日から適用する。

その他の中国国内上場企業については2029年1月1日から、企業会計準則を適用する非上場企業については2030年1月1日からの適用とされている。また、一定の条件を満たす企業については早期適用も認められる。

したがって、日本企業の中国子会社については、まず自社がどの適用区分に該当するのかを確認する必要がある。

その上で、会計システム、勘定科目、財務報告フォーマット、連結パッケージ、管理会計資料などについて、新しい損益分類に対応できるかを確認することが望ましい。

特に、親会社向けの月次報告と中国法定財務諸表で異なる勘定科目体系を使用している企業では、双方のマッピングを事前に整理しておくことが重要である。


10. 日本企業が今から確認すべきポイント

日本企業が中国現地法人を有している場合、今回の改訂に備えて、まず中国子会社の損益計算書で「営業外収入」「営業外支出」に計上されている取引を洗い出すことが有効である。

その上で、それぞれの取引が経営活動、投資活動、財務活動などのどのカテゴリーに分類される可能性があるのかを確認する。

次に、中国子会社の会計システムやERPにおいて、新しい分類に対応した勘定科目・報告項目を設定できるか確認する必要がある。

さらに、日本親会社への連結報告についても、従来の中国ローカル勘定科目から日本基準またはIFRSの連結科目へのマッピングに変更が生じるかを確認することが望ましい。

また、会計上の分類変更が税務申告や税務調整に影響するかについても、会計担当者と税務担当者が連携して確認することが重要である。

今回の改訂は単なる財務諸表のレイアウト変更ではなく、中国企業の利益構造をより明確に表示するための重要な制度変更である。早い段階から準備することで、システム改修や連結報告への影響を抑えることができる。


おわりに

2026年に改訂された中国「企業会計準則第30号――財務諸表列報」は、中国企業の損益計算書の構造を大きく見直す重要な改訂である。

特に重要なのは、従来の「営業利益」「営業外収入」「営業外支出」といった区分だけで企業の利益構造を把握するのではなく、経営、投資、財務、所得税費用、非継続事業という5つのカテゴリーを通じて、利益の源泉をより明確に表示する方向へ移行することである。

なお、「営業外収入・営業外支出の科目が2026年に全面廃止される」と単純に理解するのは適切ではない。今回の正式な改訂の中心は、損益計算書における損益の分類・表示と開示方法の変更であり、会計科目体系については今後の関連指針や会計科目体系の整備も踏まえて対応する必要がある。財政部も、新列報準則の実施に向けて会計科目体系の修訂を進める方針を示している。

日本企業にとっては、中国子会社の財務報告、連結決算、会計システム、管理会計、税務管理などに影響する可能性があるため、適用開始時期を確認した上で、既存の勘定科目や報告体系を早めに見直すことが重要である。

中国子会社の会計・税務を適切に管理するためには、中国の会計基準だけでなく、日本親会社の連結報告や中国企業所得税との関係まで含めて総合的に確認することが望ましい。


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