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中国増値税における仕入税額の費用化

免税売上・輸出退税率差と日本消費税比較
2026年7月8日 by
中国増値税における仕入税額の費用化
KAZUHISA MOCHIZUKI


はじめに

中国増値税において、免税売上に対応する進項税額が控除できず、原価又は費用へ振り替えられることは、実務上極めて重要な論点です。特に、日系企業が中国子会社の税務処理を日本消費税の感覚で理解しようとする場合、「免税」「零税率」「輸出退税」という用語の違いにより誤解が生じやすくなります。

本稿では、中国増値税における免税売上対応の進項税額処理、輸出退税率差によるコスト化、日本消費税における非課税・輸出免税との比較を整理します。


1. 中国増値税における課税・免税・零税率・不征税

中国増値税では、取引の性質に応じて、課税、免税、零税率、不征税といった分類が用いられます。

課税取引は、通常の増値税課税対象取引であり、売上税額を計算するとともに、対応する進項税額を控除することができます。

免税取引は、売上に対して増値税を課さない取引です。ただし、免税売上に対応する進項税額は原則として控除できません。そのため、免税売上に対応する仕入増値税は、進項税額から転出され、原価又は費用として処理されます。

零税率取引は、主として一定の輸出貨物やクロスボーダーサービスに適用される制度です。売上税率はゼロですが、対応する進項税額について控除又は還付が認められます。この点で、零税率は単なる免税よりも有利な制度です。

不征税は、そもそも増値税の課税範囲に入らない取引を意味します。これは、日本消費税でいう不課税に近い概念です。


2. 免税売上に対応する進項税額の費用化

中国増値税において、免税売上に対応する進項税額が控除できない理由は、免税売上が増値税の課税チェーンから外れるためです。売上に増値税を課さない以上、その売上を生み出すために発生した進項税額についても、原則として控除を認めないという考え方が採られています。

この場合、企業は免税売上に対応する進項税額を進項税額から転出し、原価又は費用として処理します。これは、日本消費税における非課税売上対応の仕入税額が控除できず、コスト化する現象と経済実質上類似しています。

もっとも、日本の「免税」は中国の「免税」と同じではありません。日本の免税は主として輸出免税を意味し、売上に消費税を課さないだけでなく、対応する仕入税額の控除又は還付を認める制度です。したがって、中国の免税は、日本の非課税に近く、中国の零税率が日本の輸出免税に近い制度と整理するのが適切です。

日本消費税では、課税売上と非課税売上が混在する場合、仕入税額控除は課税売上割合及び仕入れの売上対応区分に基づいて計算されます。具体的には、課税仕入れを課税売上対応、非課税売上対応、共通対応に区分して計算する個別対応方式と、課税仕入れ等に係る消費税額全体に課税売上割合を乗じて計算する一括比例配分方式があります。

これに対し、中国増値税では、2026年第11号公告により、輸出業務について退(免)税、免税、征税の各処理が整理されています。退(免)税政策については、免抵退税又は免退税の計算式により処理され、退税率が適用税率を下回る場合には、その差額部分が出口業務コストとなります。また、免税政策が適用される輸出業務については、進項税額は控除・還付できず、原則としてコストへ転入されます。

したがって、日本側は売上区分及び課税売上割合に基づく仕入税額控除の配分計算であるのに対し、中国側は、輸出業務の政策区分、退税率、適用税率及び免税政策の適用有無に基づき、控除・還付できない進項税額を計算する制度であると整理できます。


3. 輸出退税率差と「不得免征和抵扣税額」

中国の輸出増値税制度では、すべての輸出取引が完全なゼロ税負担になるわけではありません。輸出貨物については、適用税率と退税率が一致する場合もありますが、政策目的により退税率が法定税率より低く設定される場合があります。

この場合、征税率と退税率との差額に相当する部分は、免税・控除・還付の対象から除外されます。実務上、この金額は「当期不得免征和抵扣税額」として計算され、輸出貨物の原価に振り替えられます。

2026年以降の制度整理としては、《财政部 税务总局关于出口业务增值税和消费税政策的公告》(财政部 税务总局公告2026年第11号)第六条において、出口退(免)税の基本的な税額計算が整理されています。同条では、一般納税人の出口業務について、出口業務の売上額、適用税率、退税率等を基礎として、免抵退税額及び当期不得免征和抵扣税額を計算する枠組みが示されています。

この計算は、個々の仕入発票ごとに厳密に対応関係を追跡するというよりも、輸出貨物のFOB価格、外貨換算額、進料加工保税輸入料件の金額、適用税率と退税率との差額等を用いて、一定の公式によりまとめて計算する性格を有しています。したがって、日本消費税の個別対応方式のように、個々の仕入れを課税売上対応・非課税売上対応・共通対応に細かく区分する制度とは異なり、中国の輸出退税制度では、輸出売上及び退税率を基礎とした、よりマクロかつ政策的な計算構造が採用されていると整理できます。

例えば、ある輸出貨物の法定税率が13%である一方、退税率が9%である場合、その差額4%部分は還付されません。この差額部分は、形式上は輸出退税制度の中で発生するものですが、経済実質としては、進項税額の一部が控除又は還付されず、企業のコストとして残ることを意味します。

この点は、日本消費税の輸出免税とは大きく異なります。日本では、輸出免税の対象となる取引については、対応する仕入税額について原則として全額控除又は還付が認められます。そのため、中国のように退税率差によって一部がコスト化する制度は、通常想定されていません。


4. 退税率ゼロの場合の注意点

中国増値税では、輸出貨物の退税率がゼロである場合にも、処理を一律に判断することはできません。退税率がゼロであっても、その輸出が免税扱いとなる場合と、国内販売と同様に課税される場合があります。

免税扱いとなる輸出については、売上に増値税は課されませんが、対応する進項税額は控除又は還付できず、原価又は費用に振り替えられます。一方、輸出であっても政策上、内売と同様に課税されるものについては、売上税額を計算する一方で、対応する進項税額は通常どおり控除できます。

したがって、中国輸出増値税では、「輸出であるかどうか」や「退税率が何%か」だけではなく、その貨物がどの政策分類に属するかを確認する必要があります。名目上の分類ではなく、売上税額の有無、進項税額の控除可否、退税率差の有無を総合的に判断することが実務上重要です。


5. 日本消費税との比較と実務上の示唆

中国増値税と日本消費税を比較する際に最も重要なのは、用語ではなく経済実質を見ることです。

中国の課税取引は、日本の課税取引に対応します。中国の免税取引は、日本の非課税取引に近く、売上に税を課さない一方で、対応する仕入税額の控除を認めない点が共通しています。中国の零税率取引は、日本の輸出免税に近く、売上に税を課さず、対応する進項税額の控除又は還付を認める点が共通しています。

ただし、中国の輸出制度では、零税率又は輸出退免税の対象であっても、退税率が法定税率より低い場合には、差額部分がコスト化することがあります。この点は、日本消費税には通常存在しない中国特有の制度設計です。

そのため、中国子会社の輸出取引を管理する際には、単に輸出売上として処理するだけでなく、当該商品の適用税率、退税率、輸出政策分類、免税又は課税扱い、進項税額の転出要否を個別に確認する必要があります。


おわりに

中国増値税における免税売上対応の進項税額費用化は、日本消費税における非課税売上対応の仕入税額控除制限と経済実質上類似しています。

一方、中国の零税率及び輸出退税制度は、日本の輸出免税と類似する面を有しながらも、退税率差によって一部の進項税額が企業負担となる場合がある点で大きく異なります。

日中の間で消費税・増値税を比較する際には、「免税」という名称に惑わされず、当該取引に対応する仕入税額又は進項税額が控除・還付されるのか、それとも原価・費用化されるのかを基準として整理することが重要です。


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